日本救急医学会関東地方会雑誌
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Print ISSN : 0287-301X
症例報告
急性一酸化炭素中毒の治療経過で鉛中毒を診断した1例
横溝 真央人内倉 淑男神尾 学本多 英喜布宮 伸
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2023 年 44 巻 4 号 p. 389-392

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抄録

症例は20歳代の男性。受診日朝よりガソリンエンジン発電機を室内で使用し, 金属板の加工作業を約2時間行った後に一過性意識消失が生じたため, 前医に救急搬送された。静脈血ガス分析で一酸化炭素ヘモグロビン濃度が29.9%と高値のため一酸化炭素中毒と診断され, 高気圧酸素療法目的で当院に転院し2日間の高気圧酸素療法を行い症状は改善した。第3病日に退院したが, 入院時の小球性低色素性貧血に対する精査により鉛中毒が診断できた。本症例は鉛中毒による貧血症と急性一酸化炭素中毒による2つの酸素運搬障害により, 貧血性低酸素脳症としての意識障害が顕在化したと考えられる症例であり, 医学中央雑誌で検索したかぎり同様な症例はなかった。一般的に若年者では日常的に貧血であっても症状を呈しないことがあり, 血算の結果を注意深く確認し原因精査を怠らないことが必要である。

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