2021 年 36 巻 p. 5-18
本研究の目的は、日本の大学でのシティズンシップ教育に関する実践研究を中心に整理、分析し、そこで報告された実践の特徴と課題を明らかにすることである。日本の大学でのシティズンシップ教育に関する実践研究を対象にスコーピング・レビューを実施し、得られた文献の内容分析とマッピングを行った。結果、次の特徴が明らかとなった。①大学でのシティズンシップ教育実践が取り組まれる背景には、主に「地域社会の発展」と「若者の政治参加促進」といった社会課題が影響を及ぼしているとみられること。②その教育目標には、能力や資質を身に付け、能動的に社会参加できる市民像が設定される傾向にあること。③学生の経験を中心とした教育方法が重視される傾向があること。④具体的な職業アイデンティティを通じた教育方法がとられている点に独自性がみられること。また、その実践には、政策動向が影響を与えているとみられ、その点に課題があると考えられる。