抄録
ヒトゲノム解析が国際的な共同研究として始まってから約10年が経過し、このほど、その基本的な解析が終了したと宣言された。これからは、一人一人の遺伝子情報が医療に結びついた「オーダーメード」医療の時代に入ると予測されている。一方で、治療できない遺伝的な病気の情報を前もって知ることには何の利益もないし、不安感をあおるだけで非倫理的であるとの批判がある。またある人の遺伝情報は、その人のすべての血縁者に共有されるべきかについては、意見が分かれている。遺伝子解析にともなうそのような倫理的問題に対処するために、1992年から、ヒトゲノム解析国際倫理委員会が設置され、筆者も参加して、いくつかの提言や声明を発表し、国際的な指針を示している。生命倫理の原則は世界共通であるべきだが、日本あるいはアジア特有の問題があることにも留意しなければならない。