生命倫理
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体細胞核移植クローン技術の人への使用と「生殖の自由」
蔵田 伸雄
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2000 年 10 巻 1 号 p. 35-41

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抄録

各国が体細胞核移植クローン技術の人への使用を法的に規制する方向に向かっているにもかかわらず、「生殖の自由」という権利に訴えてクローン技術の人への使用を肯定しようとする主張は少なくない。しかしそもそも「生殖の自由」という権利は、女性の中絶や避妊の権利を確保し、強制的な不妊手術等から女性を守るための権利である。そのような権利をクローン技術の使用を正当化することにまで用いることは濫用ではないだろうか。また男女両性の遺伝子が関与しないという点で、体細胞核移植クローン技術の使用は、体外受精、非配偶者間精子提供、代理母といった既存の人工生殖技術とは本質的に異なっている。生殖とは男女両性の遺伝子が関わることによってなされることであるとするなら、クローン技術を用いた児の産生は「生殖」ではない。したがって「生殖の自由」という権利によってクローン技術の使用を正当化することはできないだろう。

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2000 日本生命倫理学会
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