抄録
東京工業大学における生物実験従事予定者の生物実験に関する知識と倫理的・社会的意識を把握することを目的としてアンケートを実施した。結果は以下の三点に集約される。1)実験従事予定者たちは、知識獲得における動物実験の有用性を認めながら、その実施に対して葛藤を持っていた。2)実験従事予定者たちには、生物実験の環境への影響はあまり意識されていなかったが、動物実験に関する反対意見を考慮しようという意思はみられた。3)動物実験を安全かつ倫理的に行うための規則や具体的方法については知らない者がほとんどであった。これらのことから、生命科学研究の倫理的・社会的問題を緩和する具体的方法として以下の三点が必要と判断された。1)科学・技術の概念を積極的に取り込んだ倫理学の構築・教育の実施、2)生物実験に関する規則とその背景を説明する講習会の実施、3)適切な理念のもとに構築された規則の制定と実践である。