生命倫理
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入院高齢患者の終末期ケアに関する意向
松井 美帆井上 正規
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2003 年 13 巻 1 号 p. 113-121

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抄録
本研究の目的は、入院高齢患者の終末期ケア、特に延命治療の意向とアドバンス・ディレクティブの是非について明らかにすることである。対象は大学病院内科病棟の65歳以上の入院患者52名で男性29名、女性23名、平均年齢は72.7歳であった。末期の延命治療については6つの医療処置に対して、全体で「希望しない」47.1〜54.9%と回答したものが最も多く、次いで「医師の判断に任す」、「家族の意向に任す」が合わせて同程度みられ、「希望する」は3.9〜9.8%と少ない結果であった。アドバンス・ディレクティブの是非については支持するが55.8%であり、女性に有意に多い結果であった。その理由として最も多かったのは「家族が判断するため」51.7%、「自分の意向を示しておくことは重要だから」34.5%であり、一方、支持しない理由としては「家族や担当医にその場になって決めてもらう」56.5%であった。以上の結果から、入院高齢患者では積極的な延命治療を望むものは少なく、家族への配慮や自己決定の重要性により55.8%がアドバンス・ディレクティブを支持していたことから、前期高齢者の世代から自らの事前指示の意向を示しておくことが重要である。またわれわれ医療人はこのような入院高齢患者の終末期ケアに関する意向を踏まえつつ、意思決定への支援を行っていく必要がある。
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2003 日本生命倫理学会
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