生命倫理
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社会的構成概念としての脳死 : 合理的な臓器移植大国アメリカにおける脳死の今日的理解
会田 薫子
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2003 年 13 巻 1 号 p. 122-129

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抄録
1997年の「臓器の移植に関する法律」の施行以来、脳死からの臓器移植に関する諸問題は、そのほとんどが片付き、残る課題の中心は、小児からの臓器摘出の可否の検討とドナー増を図ること、と考えられている。しかし、日本も採用している全脳死の概念への疑義が「臓器移植先進国」アメリカで再燃し、本質的な問題は、再び、「脳死とは何か」に戻ってきている。「脳死は人の死」というのは過去の理解であり、今やアメリカで移植医療に関わる医師や生命倫理研究者は、全脳死の概念を「論理的整合性を若干欠いていても、移植医療を支える社会的構成概念として有用」と理解しているが、ドナーになる一般市民はこれを知らない。しかし、善意のドナーが臓器移植システムの土台を成す以上、一般市民には正確な情報が与えられなければならない。善意のドナーの誤解を利用したまま臓器移植システムを運営することは許されない。
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2003 日本生命倫理学会
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