抄録
医療に対する社会的要請が増すなか、法改正による卒後臨床研修制度が義務化される。これに合わせ、卒前・卒後教育、受け入れ病院での研修カリキュラムの構築が急務とされている。特に医学教育では臨床倫理教育、すなわち、患者との信頼関係・医療秩序・医療モラルに関する教育の不足が近年認識され、新たなる教育カリキュラムの導入が待たれている。しかし具体的な教育内容については議論力て始まったばかりであり、医師の倫理意識の現状把握さえも十分とはいい難い。そこで今回、卒前教育を終えたばかりの研修医を対象に、臨床倫理教育という観点より教育内容を検討する目的で意識調査を試みた。調査の結果、比較的患者側に配慮する意識と法・倫理への興味の存在が明らかになったが、臨床倫理の意識は低いものであった。また、研修医の意識の背後にある因子を主成分分析により抽出し、判例教育という注目すべき項目を導き出した。この判例教育内容の工夫によって倫理的な判断や分析、解決、評価の思考能力を習得できると思われた。具体的な教育方法としてはPBLやロールプレイを提案した。