抄録
「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」では、ヒトゲノム・遺伝子解析研究によって明らかとなる試料提供者の遺伝情報についての開示・非開示基準を定めている(第3章11(1)、11(2))。ゲノムコホート研究は原則的に遺伝子解析結果を提供者に開示しない方向にある。しかし研究の本質及び特質から考えると、ゲノムコホート研究では、開示を希望する提供者に対しては遺伝子解析結果について開示しなければならない。また本指針には、開示を希望しない者の「知らされない権利」及びautonomyを侵害しかねない曖昧な規定が存在する。遺伝情報を介して研究者と提供者本人が、提供者のautonomyとどのように向き合うべきであるかという問題が問われている。