生命倫理
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介護施設利用に到るプロセスへの一考察 : 認知症の母親と娘の関係性の視点から
横瀬 利枝子
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2009 年 19 巻 1 号 p. 60-70

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抄録

介護の外部化・社会化が進行する現在においても、家族は主要な福祉の担い手と位置づけられており、その介護責任は多くの場合女性が担うことが期待されてきた。認知症は、その進行の仕方や症状には非常に個人差はあるが、様々の精神神経症状および言語・感情・行動・人格の異常・変化がみられる。そのような変化を伴う母親の認知症の介護において、娘介護者特有の喪失感、負担感、母親の認知症発症以前から施設入所決意に到った過程、それに伴う母と娘の関係性の変化を検証・分析した。さらに、それらの状況を通して見えてくる、現在の介護が抱える問題点を明らかにするとともに、娘介護者の負担を軽減し、母娘双方のいのちの尊厳を守り、次世代へ受け継ぐための方策を検討した。その結果、介護施設利用に至るプロセスには娘介護者特有の葛藤と時系列的順序性が見出されること、認知症発症以前から施設入所後の見守りに至る母と娘の関係性には、娘の語りから、4タイプの関係性が抽出され、それぞれの関係性が少なからず介護状況に影響を及ぼしていることが明らかになった。

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2009 日本生命倫理学会
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