昭和58年に調査した小児の看護婦が直面した倫理上のジレンマ40例について分析した。生命倫理上の問題としては、重症奇形児・障害児への医療に関するものが29例あった。看護婦の倫理規定に関しては、「可能な限り高度な看護を提供し実施した看護に責任を持つ」に関連するものが27例あった。患者の状態としては、先天性の疾病・異常に関するもの22例、後天性のもの18例であり、前者は親の考え方により、後者は医師により医療方針の意思決定がなされている傾向が見られた。いずれの場合も、直接ケアに当たっている看護婦の多くが意思決定に参加しておらず、疑問、怒り、悩み、諦めなどの複雑な気持ちを持ちながら、多くの時間をかけてケアに当たっていることがわかった。本調査から、子どもの権利を尊重すること、関係者の意見共有と相互支持および看護婦の役割の明確化が必要であることが強調される。