生命倫理
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代理出産における倫理的問題のありか : その歴史と展開の分析から
柳原 良江
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2011 年 21 巻 1 号 p. 12-21

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抄録

代理出産の是非に対する議論を深める上では、まずは現在の混乱の根元に横たわる倫理的な問いに対峙する必要がある。本稿の目的は、代理出産の展開に対する歴史的経緯と、その認識枠組みに対する変遷をたどり、この問いを明確化することである。他者に依頼して子を産ませる行為は、洋の東西を問わず、複数の文化の中に存在していたが、それらはキリスト教に影響された性規範や、近代的な人権意識によって次第に廃止され、代理出産のニーズは存在しつつも不可視化された状態にあった。1976年以降、米国でノエル・キーンをはじめとする斡旋業者が、この行為を科学の進歩主義や、身体の自律を謳う一部のフェミニズム思想など、近代的な枠組みの中で再提示したことを契機に、この行為に対する要請は再び表面化し、現在では装いを新たにした代理出産が、広く用いられている。こうした歴史的展開から、代理出産の根底にあるのは、他者の身体を利用する行為に対する倫理的問いであると言えよう。

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2011 日本生命倫理学会
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