生命倫理
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「医学的無益」はいかなる場面で有効な概念か : 医学的無益再考
加藤 太喜子
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2011 年 21 巻 1 号 p. 43-51

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抄録
治療の差し控えや中止を決定するに際して、「医学的無益」という概念がとりあげられることがある。しかし「医学的無益」という概念には、定義が困難である、どの程度無益なら無益とみなすかについての線引きが恣意的である、医療資源配分の問題とともに論じられる危険がある、といった問題がある。医学的無益という観点で治療の差し控えや中止を検討する必要がある場合、公正プロセスアプローチと呼ばれる共同での意思決定の試みがあるが、このプロセスを経ることで、患者の同意のない治療の差し控えや中止が必ずしも倫理的に正当化されるとは限らない。「医学的無益」という概念を使って説明せざるを得ない場合には、どの治療がどんな目的に対してどの程度「無益」かについて、丁寧に注意深く明示する必要がある。
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2011 日本生命倫理学会
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