2011 年 21 巻 1 号 p. 61-68
本稿の目的は、ソーシャルワーカーがターミナルケアに関わる時のナラティヴ・アプローチの意義とアドボカシーの可能性について、事例研究によって明らかにすることである。事例研究でとりあげたAさんは、「何の役にも立たなかった」というドミナント・ストーリーに支配されていたが、筆者との対話や関係性の中で、自己の人生を振り返り、他者に役立つことや、喪失した関係性を回復していくオルタナティブ・ストーリーを作り上げていった。このような関係性を構築していくプロセスが、ターミナルケアにおけるナラティヴ・アプローチの意義であるといえる。そして、その人の思いを生活の中で実現していくように環境を整えていくことも、アドボカシーの意味ではないかと考えられる。