生命倫理
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社会における脳死臓器移植 : 「2009年臓器移植法改正」論議における長期脳死と社会的合意
皆吉 淳平
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2011 年 21 巻 1 号 p. 134-142

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抄録
日本における「脳死臓器移植」の問題は、社会的な問題として議論されてきた。本稿では、脳死臓器移植と「社会」とのかかわりについて既存の議論を整理するとともに、2009年の「臓器移植法改正」論議において「社会」へとどのように言及されていたのかを検討する。「脳死」をめぐる議論は、「なぜ、脳死状態になったら、死んだといえるのか?」という理由をめぐる議論だと言える。この議論においては、「科学」的根拠、哲学的理論、臨床感覚、ベッドサイドで感じるもの、そして「社会」的理由という複数の理由が用いられてきた。なかでも近年の議論では、「長期脳死」による「科学」的根拠への影響と「社会」的理由への言及が明らかである。2009年の「改正」論議でも、「長期脳死」が広く知られることとなり、「社会」的理由としてWHOの新しい移植指針をめぐる「外圧」に言及されていた。これらはいずれも、患者と「家族」との関係性を重視する1980年代以降の日本の脳死論の特徴を反映したものだった。
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2011 日本生命倫理学会
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