生命倫理
Online ISSN : 2189-695X
Print ISSN : 1343-4063
ISSN-L : 1343-4063
法学的意思と意志の異同と患者の自己決定権
川崎 富夫
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 22 巻 1 号 p. 42-50

詳細
抄録

法学および倫理学が使用する『意思』は、歴史的、言語的、そして法解釈的に見て「意志」のことである。インフォームド・コンセントとは、患者が様々に悩む「意思」に始まり、医師と患者の『共同意思決定過程』を通して、患者が「意志」を自己形成することである。医師と患者双方の行為や行動にあらわれる「意志」をよりどころに、相手が知らない情報(episode)を提供し合いながら相互信頼を得ることである。自己決定できない患者では、家族が患者の「意志」を思いはかって患者を説得し、あるいは家族自らが納得することにより、同意が成立する。その過程において医師が患者に配慮して手を尽くしたかどうかが問題となる。迷って自己決定できない患者では、権威への依存を通して同意が成立する。臨床現場では、権威によって変容したパターナリズムが、ここに存在する。

著者関連情報
2012 日本生命倫理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top