2014 年 24 巻 1 号 p. 60-67
日本でも提供精子による人工生殖医療(AID)が実施されるようになって60年以上が経過した。そして国内外で、AID出生者の中からドナーを知りたいという声がではじめている。最近では法によって、こうしたAID出生者のドナー情報を得る権利を保障する国もでてきているが、今なお、こうした人の多くはドナー情報を得ることができない。しかしドナーや生物学的きょうだいを探すのに有効な手段として、AID出生者やドナーの情報自主登録制やドナーリンキングという活動が登場してきている。オランダではフィオムという組織が、国からの支援のもとこれらを実施している。そこで本稿では、オランダのAID出生者のドナー情報を得る権利を保障する配偶子ドナー情報法ができた経緯と、フィオムの情報自主登録制の導入とDNA鑑定をベースとするドナーリンキングへの取り組みを参考に、日本でもAID出生者のドナー情報を知る権利を守り、情報自主登録制やドナーリンキングを実施する場合、どのような課題があり、将来に備えて今、何をしておくべきかについて言及する。