生命倫理
Online ISSN : 2189-695X
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24 巻, 1 号
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  • 原稿種別: 表紙
    2014 年24 巻1 号 p. Cover1-
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2014 年24 巻1 号 p. App1-
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 目次
    2014 年24 巻1 号 p. Toc1-
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 目次
    2014 年24 巻1 号 p. Toc2-
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 木村 利人
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 3-
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 圓増 文
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 4-14
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本論文は、医療の基本的な目標としてのQOLを取り上げ、そのより正確な定義を行うことを目的としている。医療に関連した領域では、治療目標としてのQOLをより具体的にいかに理解するかをめぐって、一見して相異なる説明が見られる。一方で、QOLは主観的なものと説明されることがあり、他方で、客観的なものと説明されることもある。本論文では、まず、こうした「主観的」および「客観的」がそれぞれ二通りの意味で用いられていることを指摘した上で、その区別に対応して、QOLの理解をめぐり二つの論点があることを明らかにする。すなわち、1)誰が特定の患者のQOLを判断するのか、2) QOL判断のための社会に共通の指標を設定することは可能か否かである。次に、各論点について、「よりよい生活good life」をめぐる生命倫理および規範倫理学の議論への検討を手掛かりとして、検討を加え、これを通じて、1) QOLは患者と医療者とのコミュニケーションを通じてより正確に判断されるものであるが、ただし患者の考え方・判断に応じて各評価項目の重みづけが変わること、2)「よりよい生活」に関する私たちの社会の共通の価値判断に基づいて、QOLの指標を定めることが可能であるが、ただし注目すべき評価項目は個々の患者の状況に応じて異なることを示す。
  • 森 禎徳
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 15-23
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    「プラシーボ反応」には長い歴史があり、古代から医療とプラシーボ反応とは密接に関連しあっていた。しかし科学的根拠を重視する現代医療にとっては、プラシーボ反応は不要であるばかりか、医療の信頼を損ねる有害な要素とすら見なされている。本稿では、プラシーボ反応の真価を再検討し、それが心理的錯覚などではなく人間の心身の強い相互作用に基づいていることを指摘し、「意味反応」のメカニズムを説明する。さらに、プラシーボ反応を適切に活用することで、医療が医師と患者の双方にとってより望ましいものになることを論証する。プラシーボ反応は、人体を機械と見なす現代科学が心身の統一体としての人間については無知であることを指摘し、生命の本質に関する問いを提起する。それゆえ、プラシーボ反応の可能性を検証する試みは、単に医学的にだけでなく、哲学的、倫理的にも大きな意味を持っているのである。
  • 鈴木 崇志
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 24-31
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は、事前指示において表示された意思の撤回が認められる場合と認められない場合を整理することである。この目的を達成するために、本論文は意思の真正さという概念に注目する。このとき真正さは、意思が「自分にとって真であること」と定義されるが、曖昧さを防ぐために、本論文はこの「自分にとって真であること」を「十分な批判的反省を経ていること」と言い換える。この十分な批判的反省は、事前指示の場面では、事前ケアプランにおけるコミュニケーションの中で遂行されるべきものである。すると、事前指示のための意思形成と同程度のコミュニケーションを経て形成されるかぎりにおいて、事前指示の撤回の意思は認められるべきであると考えられる。これに対し、そのようなコミュニケーションを経る時間の余裕がない場合には、事前指示の撤回を認めることには慎重であるべきであると考えられる。
  • 峯村 優一
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 32-41
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    1981年の統一死判定法の制定によって、アメリカでは、脳幹を含む全脳の機能が、不可逆的に停止した時点を人の死とする、全脳基準が法的に認められ、医療機関で用いられてきた。しかし、その後も、「脳死とは何か」あるいは「脳死は人の死か」という脳死の概念問題は、医学・哲学関連の学会誌、シンポジウム、生命倫理に関する大統領委員会などで頻繁に議論されている。本稿では、脳死賛成派のジェームス・バーナットと反対派のアラン・シューモンの見解に焦点を合わせ、脳神経科学上において、脳死の概念問題に関して、これまでどのような議論がされてきたのかを明らかにする。脳神経科学上の見解のみでは、人は本質的にどのような実体であり、人工呼吸器に繋がれた脳死者をどのような存在と考えているのかに関しての説明が不明確であり、そのことが脳死の概念問題にうまく対処できていない要因とも考えられる。そこで、バーナットとシューモンの見解を分析哲学の理論で基礎付けることによって、それぞれの見解は、人をどのような実体とみなすことによって、成り立っているのかを明らかにし、また脳死の概念問題に関するそれぞれの主張に整合性があるのかどうかを、実体概念の分析から考察する。
  • 櫻井 浩子
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 42-51
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    日本では、2013年より無侵襲的出生前遺伝学的検査を実施するにあたり、実施機関と妊婦の条件を限定し、検査前後に必ず遺伝カウンセリングを受けることを必須条件としている。しかし、今日の遺伝カウンセリングには、妊婦に適切な情報を提供し、かつ検査結果について妊婦が適正な判断をなしうるような体制が整っていない。そこで、本稿では、無侵襲的出生前遺伝学的検査の対象の一つである18トリソミーを取り上げ、遺伝カウンセリングの方法について考察を行った。遺伝カウンセリングでは、妊婦への18トリソミーに関する情報は、胎児の医学的情報のみならず、18トリソミー児の成育や親の思いも伝えるべきであり、これまでの予後不良という単一的な情報は、妊婦の思考を停止させることにつながる。無侵襲的出生前遺伝学的検査のガイドラインの作成および妊婦のこころのケアの体制が必要である。そして、遺伝カウンセラーには、中立的・非指示的な立場であることが望まれる。
  • 飯島 祥彦
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 52-59
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    災害時に被災者を対象とする調査研究は、将来災害が発生した際、過切な対応を行うためのデータを提供するためには不可欠である。また、災害発生直後に実施することが求められる。しかしながら、被災者は、ストレスに曝され困難な状態にあるため、その権利・利益の保護が要請される。多数の同種の研究が同一の被災者を対象にすることになる研究の集中と重複を防止し、被災者である研究参加者が過度な負荷を負わないようにしなければならない。そのためには、災害時の調査研究を行政の関与の下、中心となる研究機関の倫理審査委員会が倫理審査を一括して引き受けるなど、集中する研究をコーディネートするとともに、迅速に倫理審査を行うことができる体制を構築しなければならない。
  • 仙波 由加里, 清水 清美, 久慈 直昭
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 60-67
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    日本でも提供精子による人工生殖医療(AID)が実施されるようになって60年以上が経過した。そして国内外で、AID出生者の中からドナーを知りたいという声がではじめている。最近では法によって、こうしたAID出生者のドナー情報を得る権利を保障する国もでてきているが、今なお、こうした人の多くはドナー情報を得ることができない。しかしドナーや生物学的きょうだいを探すのに有効な手段として、AID出生者やドナーの情報自主登録制やドナーリンキングという活動が登場してきている。オランダではフィオムという組織が、国からの支援のもとこれらを実施している。そこで本稿では、オランダのAID出生者のドナー情報を得る権利を保障する配偶子ドナー情報法ができた経緯と、フィオムの情報自主登録制の導入とDNA鑑定をベースとするドナーリンキングへの取り組みを参考に、日本でもAID出生者のドナー情報を知る権利を守り、情報自主登録制やドナーリンキングを実施する場合、どのような課題があり、将来に備えて今、何をしておくべきかについて言及する。
  • 金森 修
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 68-75
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本稿は現代の生命倫理学でも重要な位置を占める<人間の尊厳>という概念が、ヨーロッパの歴史の中でどのような文脈の中で生まれ使われてきたのか、その主要な流れを最低限確認することから始めた。その際、インノケンティウス三世の<人間の悲惨>論に重きを置いた記述をした。また、ピコ・デラ・ミランドラの高名な一節が含意する、一種の知性鼓舞論が、純粋に世俗的な位相のみにおいて<人間の尊厳>概念を理解することを困難にしているという事実に注意を喚起した。それらの検討を通してわれわれは、この概念が十全に機能するためには、神のような超越的存在との関係における人間の定位を必要とするということを示した。では現代の世俗的社会の中で、この概念の使命は既に終わったと考えるべきだろうか。いや、そうは考えない。この神的背景を備えた概念は、世俗的微調整の中でその神的含意を解除されながらプラグマティックに使用され続けるという趨勢の中でも、依然として人間存在の超越性を示唆し続けることをやめないだろう。それこそが、この概念の独自な価値なのである。
  • 倉林 しのぶ, 芝山 江美子, 宮崎 有紀子, 李 孟蓉, 尾島 喜代美, 風間 順子
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 76-86
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本調査では、「虐待」および「虐待」のグレーゾーンともいえる「不適切な行為」の認識に影響を及ぼす因子と、その「気づき」を促すための方策を探ることを目的に介護関連施設職員240名を対象にした自記式無記名による質問紙調査を実施した。その結果、「虐待」として認識率が高いものは、"高齢者への被害が明らかな行為"であり「不適切な行為」としては、"高齢者本人に直接的な侵襲がないと思える行為"があがった。30%以上が「問題ない」と認識した行為はいずれも「安全優先」「施設都合」「家族優先」のいずれかが背景にあった。また、職種別による「虐待」の認識率は「介護福祉士」が最も高く、経験年数別では、「3年以上」が「3年未満」より高率であった。虐待や不適切行為を捉える能力は教育だけで身に付くものではなく、介護の実践経験を積むことで養われる能力の存在も示唆され、人材養成教育や職員教育の充実とともに、実践現場における事例検討等を含めた教育継続が必要である。また、対象者への直接的な侵襲がない行為でも守秘義務や自律尊重に関わる倫理的問題が含まれている場合があり、それらを見極める能力を高めることも必要と思われた。
  • 鶴若 麻理, 横瀬 利枝子
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 87-95
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本研究は、台湾のハンセン病回復者26名へのインタビュー調査をもとに、患者側からみた看護婦や看護ケアの内容について明らかにすることを目的とした。インタビュー調査の結果、患者からみた看護婦として、【感染への恐れを表現する】【特定の場所にいる】【忙しい】【見習い】【近所在住の若い娘】を抽出できた。また、患者が看護婦がやっていたと認識していたことは、【医療に関すること】【診察室の掃除】【薬に関すること】【切断した手足を運ぶ】【何をしているかわからない】であった。看護婦との関係性は、【人間として尊重されない】【物理的距離】などの尊重されていない経験を挙げる一方、【院内ルールの遵守】【子どもへのかかわり】【看護業務外のかかわり】など看護婦による優しいかかわりも多く語られた。ただ対象者が看護婦に求めていたことは【熟練した技術】であった。どの年代でも対象者は、「感染の恐れ=看護婦の服装」と捉え、看護婦は何かをしてくれる人、看護婦はこういうことをする人という明確な認識をもって語る人はいなかった。単に看護婦やっていたことを通して、それが看護婦の仕事と認識しているのが明らかになった。今後、看護婦へのインタビューも実施することで、本調査から得られた知見を補完していくことが可能となる。
  • 田中 美穂, 児玉 聡
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 96-106
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    高齢化に伴い、世界的にも認知症患者は増加傾向にある。世界各国は、能力の無い人の終末期医療の意思決定に関する諸問題の解決策を模索しているのが現状である。そうした試みの一つが、英国のMental Capacity Act (MCA,意思能力法)2005である。特徴的なのが、能力が無くなった場合に備えて代理人を設定する「永続的代理権」と、さまざまな権限を有した代弁人が、身寄りのない人の最善の利益に基づいて本人を代弁する「独立意思能力代弁人制度」である。本稿では、この2つの制度に焦点をあてて、MCA2005の実態を把握し、終末期医療に及ぼす影響を明らかにするため、国の公式文書や報告書、学術論文などを使って文献調査を行った。そのうえで、司法が抱える課題を指摘した。日本国内においても認知症の増加によって、能力が無い人の終末期医療の決定が大きな問題となるであろう。事前指示のみならず、代理決定も含めた行政ガイドライン、法的枠組みの必要性について議論する必要がある。
  • 神馬 幸一
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 107-115
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    平成24年2月13日付の最高裁判所決定(いわゆる「奈良県医師宅放火殺人の供述調書漏洩事件」)は,医師を被告人とした秘密漏示罪の成否に関する初の判例とされる。また,その補足意見では,ヒポクラテスの「誓い」が引用された。すなわち,本決定は,倫理的観点から法的守秘義務の実質的根拠をも論じているという意味で過去に類例がない判例である。本稿は,このような倫理的観点の導入により,いかなる変容が法的守秘義務の射程範囲に生じたのかを本決定を素材として検証するものである。特に秘密を巡る当事者間の信頼関係の要否が守秘義務の限界を画する上でも重要であることを本稿において指摘した。この点,本決定によれば,秘密漏示罪の成立に関して,当事者間における具体的な信頼関係が構築される必要はないという結論が採用された。本稿は,そのような結論を支持しうる幾つかの生命倫理学的な論拠を検討し,それらの多義性と普遍性の両面を確認した。その上で,本決定では,必ずしも十分な理由付けが示されないまま,法的守秘義務の拡張傾向が生じているとして批判的に考察を加えた。最終的に,この法的守秘義務に関する判例・学説の検討を通して,本稿は「法と倫理」の関係性が再確認されるべきことの必要性を強調するものである。
  • 寿台 順誠
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 116-125
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    「リビングウィル」や「事前指示」といった、今日の「死と死にゆく過程」をめぐる言説は、「自律」原則の下にあって、死に関して「自己決定」を迫るものが多い。しかし、終末期において最も重要なことは、本当に「自分らしい」死に方を決めることであろうか。本論文で筆者は、それよりもっと重要なのは、死にゆく者と看取る者の間の「共苦」であると主張する。以下まず、アメリカにおける関連する裁判や立法を検討しているロイス・シェパードの議論を紹介して、「自律から苦悩へ」という考え方の転換の意義を確認し、次に、日本における「安楽死・尊厳死」裁判を再検討して、そこでは患者よりもむしろ「家族の苦悩」への同情が判断の決定的要因であったことを確かめる。しかし日本でも最近の裁判では、患者の自己決定権を根拠に安楽死問題の医療化と法化が進行しており、次第に事件の場面から「家族」が姿を消しつつある。そこで最後に筆者は、死にゆく者と看取る者(家族等)が苦悩を共にする「共苦の親密圈」を再構築することが重要であると結論づける。
  • 横瀬 利枝子
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 126-135
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本稿では、既往歴を秘匿し社会で暮らす退所者へ聞き取り調査をおこない、終の棲家についてどのような選択肢を考え、退所者であるがゆえのどのような苦悩を抱えているかを検討した。その結果、退所者の終の棲家の選択には、ハンセン病の既往歴を了解し、個人情報を厳守する一般医療機関の充実、後遺症のケアの充実など、医療との問題が大きく影響していることが明らかとなった。一方、最も助け合えるはずの退所者同士が敢えて互いに疎遠である状況も明らかとなった。この状況は、偏見や差別から自分も相手も守り、社会で生きるためのやむを得ない自己防衛とも考えられるが、それ故に情報が得にくい状況にあった。社会のハンセン病への関心は薄れているが、退所者のスティグマは内面化され、病と疎外の問題は解決されていない。支援する側は、多様な生活を営み、多様な意見を持つ人々を「退所者」としてカテゴリー化し、保護的な立場で対応しがちであるが、夫々の退所者の想いを尊重した支援が喫緊の課題である。
  • 福田 八寿絵
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 145-153
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本稿は、高齢患者の医療行為の選択における判断基準、同意能力評価法を検討し、その利用可能性と課題を明らかにすることを目的とする。加齢とともに慢性疾患や障害によって認知機能や意思を表現する能力が低下し、治療などの医療行為に対する意思決定を行うことが困難となる場合も少なくない。そのためさまざまな同意能力の評価法が開発されてきているが、基準は一定ではない。既存の同意能力評価方法は有効性についての検討症例が比較的少なく、評価の閾値をどのように設定すべきか、評価の客観性や適用対象などについてもさらなる検討が必要となる。評価結果の適用を医療専門職の裁量に委ねる場合についても十分な説明責任を果たすことが求められる。医療専門職や家族が高齢者の価値観や選好を理解し、総合的な同意能力評価を行うことで、高齢者のエンパワーメントを促し、意思決定プロセスの透明性を高め、患者の意思をより的確に医療行為に反映させることが可能となる。
  • 石田 安実
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 154-162
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    治療場面におけるインフォームド・コンセント(IC)の取得においては、近年、患者の自律性を確保するために「会話モデル」が推奨されているが、このモデルにもさまざまな問題が指摘される。特に、実際の有効性や法的な実行性の面で問題が多い。それを補うためにハワード・ブロディは、会話モデルに「透明性基準(transparency standard)」を追加することを提案する。これは医師主導の対話の提案であり、IC取得での会話モデルの実効性を高めてくれるが、(著者が「緩やかなパターナリズム」と呼ぶ)一種のパターナリズムをもたらすように見える。そのパターナリズムは正当化されるだろうか、されるとすればどのような意味でされるだろうか。本稿は、医師主導の対話法がパターナリステックな傾向を示したとしても、患者がICにおける決定事項を価値観を含めて納得いく形で受け入れることができるならば、患者の自律性という観点から、それは受容すべきパターナリズムだと主張する。
  • 末永 恵子
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 163-170
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    医学は人間の生命と尊厳を守ることを最終目的としているので、医学研究はヒューマニズムに基づく行為と見なされがちである。しかし、一般論では医学研究は肯定されても、それが実施される時期や地域や社会環境によっては、社会との調和のとれない状況を呈することがある。その研究の意義や有益性は認められても、社会状況にそぐわないとして批判され、再検討を求められている場合もある。本稿が取り上げる「東北メディカル・メガバンク計画」の問題は、まさにその代表例といえる。「なぜ今被災地で、ゲノム研究をするのか」という疑問の声は、計画のはじめから現在まで絶えない。そこで、この事業の推進論と反対論の主張を取り上げ、両者の議論の対立点を洗い出した上で、被災地における医学研究および医療政策はどのようにあるべきなのか、方向性やその意思決定の手続きについて考察することとしたい。
  • 安藤 満代, 二の坂 保喜
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 171-177
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,患者を在宅で看取った遺族から見た在宅療養に対する認識について調べることであった。在宅ホスピスを提供しているクリニックで患者が亡くなって半年から2年未満の遺族100名に調査票を郵送し,返送があった45名を分析対象とした。調査票に在宅療養を利用した感想や意見を自由に記述してもらった。文章は質的な内容分析を行い,要約としてカテゴリを抽出した。その結果,【ケアリングの精神があるケア】,【介護に対する自信を高めるケア】,【各専門職による適切なケア】,【在宅療養への満足】,【在宅療養への推進の意志】など,在宅療養に対して肯定的なカテゴリが抽出された。一方では,【後悔】や【疑問に思うこと】など,今後の課題も抽出された。これらの結果から,家族は在宅療養にほとんど満足しているが,後悔や疑問に思うこともあり,今後はこれらを解消することでさらに在宅療養への認識も肯定的になると考えられた。
  • 濱崎 絵梨, 葛生 栄二郎
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 178-185
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本稿では、終末期医療に携わる医師へのインタビューを参考に、医師と患者の「死についての語り」に着目し、死の受容を目指した対話のあり方についてケアリング視点から考察を試みた。臨床現場における「死についての語り」の二つの理念型を見出し、死について「語らない医療」「語らせる医療」「語り合う医療」という発展プロセスを示した。End of life careにおいては、「語り合う医療」すなわち対話が重要である。医師と患者という特別な関係下ではなく、同じ死すべき限界をもった生身の人間同士の人格的対話によって、互いに成長すること、すなわち、そのプロセスによって、患者にとっては自らの死を受け容れていくこと、医師にとっては、患者に学び、自身の死生観について考察を深めていくことが重要なのである。
  • 新山 喜嗣
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 186-196
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    人生の終着点にある死の存在は、われわれにあらためて生の日々の大切さを強く実感させるが、このような死が生にもたらす意義が、われわれの心理的な側面を越えて、未来を指向する人生の価値といったより存在論的な側面にまで及ぶことを、分析哲学の時間論の座標上にわれわれの生を乗せつつ確認することを試みた。その過程で、「永遠に死ぬことがない」という妄想主題をもつコタール症候群に注目したが、本症候群における不死の主題が結びつくのは、生命の活力や未来の希望ではなく、むしろ一切の存在の価値を剥奪された人生に対する深い絶望であり、その理由を現代時間論の視点から検討した。すなわち、不死妄想においては死という視座が欠如するため、死の視座から付与されるはずの未来の輪郭が結像せず、その輪郭が生の価値へと生長することが永久に阻止されたままになると考えられた。このコタール症候群の臨床像は、未来から絶えず現在に収斂する存在論的な生の意義が、死が存在することによってこそもたらされることを、逆説的に示唆するものであると思われる。
  • 佐伯 恭子, 諏訪 さゆり
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 197-206
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、高齢者へのAHNの検討に関する現状についての看護師の認識を明らかにし、AHNの検討に関する意思決定プロセスにおける看護師の役割について検討することである。AHNが検討される状況にある高齢者とその家族とかかわった経験のある看護師7名を対象に面接調査を実施し、質的帰納的分析をおこなった。分析の結果、《ある程度長期にわたるAHN検討までの経緯》、《医師が特定のAHNを勧める理由》、《AHNに関する医師から家族への説明内容》、《AHNに関する選択をせまられた家族の状況》、《AHNに関する選択をせまられた家族に対する看護師のとるべき立場》という5個のコアカテゴリーにまとめられた。看護師は、決断するのは家族であるという認識を持っており、家族の選択に影響するような話はできないと考えていた。本研究結果より、看護師は、治療による生活への影響に関する情報を提示する役割があること、家族側の情報を引き出すことも意思決定プロセスの一部であることを意識し、意思決定プロセスを開始し、主体的かつ継続的に支援する役割があることが示唆された。
  • 大桃 美穂
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 207-215
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    日本の単身世帯の増加に伴い、医療機関はこれまで以上に積極的に治療方針の意向と希望について患者本人に確認する必要が生じてきた。一方、救急の現場では、極めて短時間のうちに治療方針決定を迫られるため、患者の意向と医療者が考える患者の最善との間に差異が生じかねない、というジレンマを抱えている。そこで、本研究では、救急領域で医療チームが患者本人に対して行う、治療方針についての「意思決定プロセス支援」の実情を検証し、日本の二次救急医療システムの現状と課題を明らかにした上で、看護師の担う役割について考察した。救急領域で「意思決定プロセス支援」を行う看護師の役割とは、患者の意向を根底にして医学的判断や倫理的判断を行いながら、治療方針の共有・合意へと向かうために、患者のアドボケイトとして医療チームと患者の架け橋となることである、といえるだろう。
  • 佐藤 真輔
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 216-224
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    最近、臨床での遺伝子検査にゲノム解読等が用いられる場合が増えてきたが、この手法により、本来の検査目的外の、患者の健康等に影響を及ぼす可能性のある変異が発見される可能性、すなわち偶発的所見が得られる可能性が必然的に高まっている。2013年7月、米国臨床遺伝学会(ACMG)は、臨床遺伝子検査でゲノム解読等を行う場合、特定の遺伝子の変異については患者の希望の有無にかかわらずその解析を行い、その結果を返却すべきとする旨の勧告を出した。だが、同勧告についてはその後、倫理的、法的、科学的観点等から各種の議論がなされている。本稿においては、同議論の内容について整理・分析するとともに、その経緯や周辺の状況、また我が国の状況等も踏まえ、かかる偶発的所見への対処のあり方について考察を行う。
  • 及川 正範, 藤田 みさお, 赤林 朗
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 235-243
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    近年、バイオバンク研究では「包括同意」が注目されている。この同意方法によって、研究参加者から再同意を取得することなく新たな研究に試料・情報を利用することが可能になる。しかし一方で、この同意方法には倫理的な問題が存在し、慎重な運用が必要であることが指摘されている。本稿では、包括同意に求められる要件とそのあり方を検討すべく、文献レビューを中心とする研究を行った。まず、「包括同意の諸形式」及び「研究システムによる補完」の二つの観点から包括同意の諸要件を整理した。次いで、諸要件の倫理的な背景を検討することによって、包括同意を採用する際のあり方を考察した。その結果、包括同意を実施するには自律尊重や善行、無危害といった従来の倫理原則に加え、研究システム全体の信頼性という研究参加者と研究者ないし研究機関とを繋ぐ新たな関係性の原則が必要であることが示唆された。
  • 伊吹 友秀
    原稿種別: 本文
    2014 年24 巻1 号 p. 244-254
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
    現在、生まれてくる子供の性別を選択するための最も有効な方法の一つが着床前診断(PGD)を用いる方法である。わが国では性別の選択を目的としたPGDの利用は許容されていないものの、少なからぬ親たちが海外でこれを実施したことが報道された。そこで、本論文では、わが国における性別の選択を目的としたPGDの利用の是非について考察することを目的として、欧米の先行研究に関する文献調査とそれに基づく理論的な研究を行った。その結果、性別の選択を目的としたPGDの利用については、1)安全性・リスクの問題、2)性差別の助長の問題、3)性比の不均衡の問題、4)親の子どもに対する態度やまなざしの変化の問題が批判的に指摘されていること、親の自律や自由の観点から反論がされていることを明らかにした。その上で、これらの問題点をわが国の文脈も考慮に入れた場合に、どのように解釈されるかについて考察を加えた。最終的に、親の子どもに対する態度やまなざしの変化の問題と関連して、徳倫理学的な観点からの分析を行った。
  • 原稿種別: 付録等
    2014 年24 巻1 号 p. 255-265
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2014 年24 巻1 号 p. 267-
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2014 年24 巻1 号 p. 268-
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 付録等
    2014 年24 巻1 号 p. 268-
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
  • 原稿種別: 表紙
    2014 年24 巻1 号 p. Cover2-
    発行日: 2014/09/26
    公開日: 2017/04/27
    ジャーナル フリー
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