生命倫理
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ICにおける「緩やかなパターナリズム」の正当化の検討
石田 安実
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2014 年 24 巻 1 号 p. 154-162

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抄録

治療場面におけるインフォームド・コンセント(IC)の取得においては、近年、患者の自律性を確保するために「会話モデル」が推奨されているが、このモデルにもさまざまな問題が指摘される。特に、実際の有効性や法的な実行性の面で問題が多い。それを補うためにハワード・ブロディは、会話モデルに「透明性基準(transparency standard)」を追加することを提案する。これは医師主導の対話の提案であり、IC取得での会話モデルの実効性を高めてくれるが、(著者が「緩やかなパターナリズム」と呼ぶ)一種のパターナリズムをもたらすように見える。そのパターナリズムは正当化されるだろうか、されるとすればどのような意味でされるだろうか。本稿は、医師主導の対話法がパターナリステックな傾向を示したとしても、患者がICにおける決定事項を価値観を含めて納得いく形で受け入れることができるならば、患者の自律性という観点から、それは受容すべきパターナリズムだと主張する。

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2014 日本生命倫理学会
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