生命倫理
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報告論文
アドバンス・ケア・プランニングの プロセスと具体的支援
-訪問看護師が療養者へ意向確認するタイミングの分析を通して-
鶴若 麻理大桃 美穂角田 ますみ
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2016 年 26 巻 1 号 p. 90-99

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抄録

    本稿の目的は、在宅看取りを支援する訪問看護師による高齢者の意向確認のタイミングと援助の分析を通して、アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning、以下 ACP とする)のプロセスと具体的支援を考えるものである。65歳以上で同居の家族がいる非がんの事例に絞り、3 年以上の訪問看護経験者にガイドを用いた半構造化面接を行った。対象看護師は23名で34事例を分析した。訪問看護師が意向確認をする6 つの状況(在宅ケア開始時、日々のケア、身体状況の変化、終末期、家族らの介護負担、家族の不十分な介護力)とそれに伴う18のタイミングが抽出でき、繰り返し意向確認が行われていた。看護師は心身の変化等の目にみえるタイミングに意図的に働きかけるだけでなく、ケアを通した療養者との日々の会話の中で表出される思いから、意向を引き出すタイミングに繋げていた。看護師は療養者、家族、療養者と家族の関係性に対して支援を行い、療養者の意向や希望を第一に、療養者の意思決定を促すようサポートし、療養者にあったエンドオブライフケアの提供を行っていた。本研究で見出された訪問看護師による働きかけのタイミングとそれに伴う療養者、家族、医療チームとの継続的な話し合いが ACP の具体的プロセスの一端を示していると考える。ACP を支援する看護師にとって、日常ケアを大切にし、医学的知識に裏打ちされたアセスメントから導き出される見通力と、信頼を築き療養者や家族の意思を表出させるためのコミュニケーション力が重要であると示唆された。

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2016 日本生命倫理学会
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