生命倫理
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医療における義務衝突と義務の優先順位(1. 医療資源の配分における公平と効率)
大嶋 一泰
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1993 年 3 巻 1 号 p. 16-21

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抄録

医療の領域で、医師は救助義務、診療義務、説明義務、秘密保持義務、屈出義務などさまざまな法的・倫理的義務を負っているので、しばしばその具体的な特別の状況上いずれか一つの義務に違反することなしには、他の義務を履行しえないという義務の衝突に直面する。義務の衝突の場合には、義務を比較考量して、より高い価値の義務を履行すべきであるが、同価値の義務の衝突では、場合を分けて考察しなければならない。同価値の作為義務と作為義務の衝突および同価値の不作為義務と不作為義務の衝突の場合には、どちらか一つの作為義務あるいは不作為義務を履行すれば足りる。しかし、同価値の作為義務と不作為義務の衝突の場合には、不作為義務を履行しなければならない。例えば、救命の作為義務と殺害禁止の不作為義務とが、同時に同一人に課せられ衝突するときは、殺害禁止に従い、不作為に留まらねばならない。他人の生命を犠牲にして救命をなすべき義務はないと言わねばならない。義務衝突の下でなされた行為の評価には、義務の比較考量だけでなく、さらに義務の履行方法の評価をも必要とする。治療目的を達成するための医的侵襲が正当化されるためには、まず第一に医的侵襲につき説明し、患者の承諾を得ることが必要であり、第二に侵襲が治療目的を達成するための必要性・相当性・補充性を備えることが必要である。

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1993 日本生命倫理学会
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