2022 年 32 巻 1 号 p. 4-11
本稿の目的は、日本の医療の場に臨床倫理委員会と臨床倫理コンサルテーションが形成される経緯と現状、 その役割を明らかにし、対応すべき課題を示すことにある。1980年代に研究を審査する倫理委員会の設置が始まり、90年代にはそこでの臨床における倫理問題の検討、あるいはそれを扱う臨床倫理委員会の設置が進み、 また臨床倫理コンサルテーションが提供されるようになった。委員会とコンサルテーションを規定する法もガ イドラインもないが、現在は全病院のおよそ4 分の1 で自主的に運営されている。この手続の履践が、下される判断の適法性を担保すると考えられる。委員会とコンサルテーションの役割は、1) 個別事例への倫理的助言、2) 院内の指針作成、3) 医療者への情報と研修の提供である。取り組むべき課題として、1) 活動の記録、2) 学会を通じた知見の共有、3) 制度の普及、4) 専任者配置による活動の持続化が挙げられる。