動物の行動と管理学会誌
Online ISSN : 2435-0397
原著論文
イヌの自主性に配慮した動物介在活動とその評価
岩田 惠理澤田 明子
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2019 年 55 巻 4 号 p. 154-164

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抄録

動物福祉の観点からも、動物介在活動(AAA)は参加者のみならず参加動物にとっても楽しく、また負担にならないものであるべきである。AAAの参加者への利益と動物福祉との両立を目的として、大学の心理・教育的支援の中核である学生相談室が運営する「学生サロン」へ訪れる学生を主な対象とし、イヌを用いたAAAを実施した。本研究のAAAでは、参加学生を床に着座させ動きを制限した一方、イヌには室内で自由行動をとらせ、参加学生とふれあうかどうかの選択権をイヌに与えた。イヌが参加学生とふれあった時間の割合は、個体により大きくばらついた(18.18~68.32%)。一方、参加学生にはAAA参加中、向社会的な行動上の変化があったことが参与観察により明らかになった。AAA実施前後の唾液中コルチゾル値は参加犬、参加学生ともに有意に低下した(P<0.05)。AAA実施前後の唾液中オキシトシン濃度は参加犬、参加学生共に有意差は認められなかった。以上の結果から、ふれあうかどうかの選択権をイヌに与えても効果的なAAAを実施することが可能であり、イヌへのストレス負荷も軽減されることが明らかとなった。

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© 2019 動物の行動と管理学会
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