動物の行動と管理学会誌
Online ISSN : 2435-0397
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キリンへの冬季の樹木給餌は口の常同行動を減少させるか?
岡部 光太河村 あゆみ福泉 洋樹石内 琴音加瀬 ちひろ
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2019 年 55 巻 4 号 p. 165-173

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抄録

近年、動物福祉の観点から飼育動物の環境の改善が多くの動物園で行われている。特にキリンでは、口の常同行動の減少のために複数の採食エンリッチメントの実施が行われている。先行研究では、複数の給餌器の設置や乾草の給餌量の変更、樹木給餌の実施が常同行動の減少に効果があったとされている。しかし、樹木給餌は冬季の実施が困難であり、冬季においてはその効果も明らかとはなっていなかった。そこで今回、全ての季節において樹木給餌を行い、樹木摂食量と口の常同行動の調査を行った。観察には京都市動物園で飼育する3頭のキリンを供試した。その結果、樹木摂食量は季節間で有意な変化は見られず、ほぼ同量の摂食が確認された。一方、全ての個体で口の常同行動が観察され、有意に冬に増加する結果となった。樹木摂食量と口の常同行動の発現量には相関は見られなかった。そのため、今回の観察において、樹木摂餌量ではない、例えば本来の生息地との間に生まれる気候的なギャップが要因となっている可能性が考えられた。それゆえ、口の常同行動に与えるその諸要因は未だは明らかではないため、今後さらなる研究が必要である。

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© 2019 動物の行動と管理学会
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