動物の行動と管理学会誌
Online ISSN : 2435-0397
原著論文
ウシの行動と自律神経系機能を指標としたタイストールとスタンチョンストールの快適性の比較
梅崎 世成矢用 健一松本 みどり黄 宸佑
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2021 年 57 巻 1 号 p. 12-19

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抄録

日本における乳牛の飼養方式は、スタンチョンストールが全体の20%、タイストールは50%を占めている。しかし、この2つの繋留方式間の快適性を比較した研究はほとんどない。本研究はホルスタイン種去勢雄8頭を供試し、行動および自律神経系機能を指標として、両繋留方式の快適性を比較することを目的とした。供試牛の摂食行動、立位/伏臥位反芻、立位休息、頭部を前方/後方に向けた伏臥位休息、セルフグルーミングを3日間記録するとともに、ホルター心電計を用いA-B誘導法により心電図を記録した。得られた心電図データから心拍変動解析により心拍数および自律神経活動指標であるlow-frequency power(LFパワー)、high-frequency power(HFパワー)とLF/HFを算出した。タイストールと比べ、スタンチョンでは頭部を後方に向けた伏臥位休息行動割合(P < 0.05)および後躯を対象としたセルフグルーミングの頻度が低かった(P < 0.001)。LFパワー以外の自律神経系機能指標に両繋留方式間で有意な差がなかったことから、ストレス反応に差がなかったことが示唆された。LFパワーがスタンチョンの方が高かった(P < 0.05)原因は、供試牛の頭部を後方に向けた伏臥位休息が少なかったことにあると考えられた。本研究の結果から、スタンチョンでは行動発現が抑制されているにも関わらず、自律神経系機能で見る限りは両繋留方式間のストレスレベルには差がなかったことが示された。

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