動物の行動と管理学会誌
Online ISSN : 2435-0397
57 巻, 1 号
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原著論文
  • 堀井 隆行, 相澤 里菜, 福山 貴昭, 宮田 淳嗣, 川添 敏弘, 植竹 勝治, 田中 智夫
    2021 年 57 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/06/09
    ジャーナル フリー

    本研究では、愛着対象である飼い主の体臭が、飼い主との分離状態のイヌの行動に及ぼす影響を調べることを目的とした。健康で分離不安の既往歴のない一般家庭犬12頭を供試した。イヌに提示するニオイとして飼い主の靴下(愛着対象の体臭付着物)、牛干し肉(興味を示しやすいニオイ)、ラベンダー精油(リラクゼーション効果が報告されている芳香物質)、Control(コットンのみ)という4種類のニオイ刺激を選定した。各ニオイ刺激は、クッションカバーの裏側のポケットに入れて、サークル内でイヌに30分間提示した。このとき、実験室内にはイヌのみを残し、イヌの行動反応はビデオカメラで撮影した。ニオイ刺激の提示は、連続的に繰り返したが、4×4ラテン方格法を用いて提示順の影響を考慮した。飼い主の靴下に対する探査時間の長さは、ラベンダー精油よりも有意(P < 0.05)に長かった。Controlとの差は有意ではないものの、約半数のイヌがControlの倍以上の時間を飼い主の靴下の探査に費やしており、そのような個体は飼い主の靴下に付着した汗のニオイに対してより強い興味を示したと考えられる。また、飼い主の靴下を長く嗅ぐ個体は、ニオイ(クッション)周囲での伏臥・横臥位休息も長い(rs=0.661、P < 0.05)ことから、そのような個体は飼い主の体臭付着物に対して飼い主の代替として近接性を維持する愛着行動を示した可能性が考えられた。しかし、飼い主との分離に伴う発声の抑制作用については明確ではなかった。

  • 梅崎 世成, 矢用 健一, 松本 みどり, 黄 宸佑
    2021 年 57 巻 1 号 p. 12-19
    発行日: 2021/03/25
    公開日: 2021/06/09
    ジャーナル フリー

    日本における乳牛の飼養方式は、スタンチョンストールが全体の20%、タイストールは50%を占めている。しかし、この2つの繋留方式間の快適性を比較した研究はほとんどない。本研究はホルスタイン種去勢雄8頭を供試し、行動および自律神経系機能を指標として、両繋留方式の快適性を比較することを目的とした。供試牛の摂食行動、立位/伏臥位反芻、立位休息、頭部を前方/後方に向けた伏臥位休息、セルフグルーミングを3日間記録するとともに、ホルター心電計を用いA-B誘導法により心電図を記録した。得られた心電図データから心拍変動解析により心拍数および自律神経活動指標であるlow-frequency power(LFパワー)、high-frequency power(HFパワー)とLF/HFを算出した。タイストールと比べ、スタンチョンでは頭部を後方に向けた伏臥位休息行動割合(P < 0.05)および後躯を対象としたセルフグルーミングの頻度が低かった(P < 0.001)。LFパワー以外の自律神経系機能指標に両繋留方式間で有意な差がなかったことから、ストレス反応に差がなかったことが示唆された。LFパワーがスタンチョンの方が高かった(P < 0.05)原因は、供試牛の頭部を後方に向けた伏臥位休息が少なかったことにあると考えられた。本研究の結果から、スタンチョンでは行動発現が抑制されているにも関わらず、自律神経系機能で見る限りは両繋留方式間のストレスレベルには差がなかったことが示された。

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