本試験では,ウシのカウブラシ利用欲求に及ぼす利用制限の影響について調査を行った。茨城大学農学部附属国際フィールド農学センターの黒毛和種繁殖牛を使用した。14日間,7日間,3日間の3つの制限条件を設け,制限前,制限中,制限解除後における維持行動,ブラシ利用以外の身繕い行動(セルフグルーミング,物を使ったグルーミング,社会的グルーミング),カウブラシの利用を比較した。維持行動およびブラシ利用以外の身繕い行動については,いずれの制限条件においても変化は認められなかった。一方で,ブラシの利用については,14日間の制限条件では,制限前後で差は認められなかったが,7日間の制限条件では,制限前と比較して制限解除後の平均利用時間が約175%増加,3日間の制限条件では,制限解除後の平均利用時間が約80%増加した。以上より,カウブラシの利用欲求は他の身繕い行動とは独立した欲求である可能性があり,利用制限による影響を受ける可能性が示唆された。