動物の行動と管理学会誌
Online ISSN : 2435-0397
58 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
Original article
  • 深澤 充, 高橋 理沙子
    2022 年 58 巻 2 号 p. 39-47
    発行日: 2022/06/25
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    季節性および日内の行動発現パターンの理解は生産性および福祉性を改善するための適切な管理のために役立つ。本研究では、搾乳管理下でのホルスタイン種搾乳牛における睡眠様姿勢の季節性および日内の発現パターンについて調査することを目的とした。14頭のホルスタイン種搾乳牛を供試し、5月(春)、8月(夏)、10月(秋)および12月(冬)に睡眠様姿勢の発現を測定した。日発現時間、日発現回数および平均発現持続時間に季節間で差はなく安定した発現を示した。2時間ごとの発現時間については、いくつかの時間帯で季節間に発現時間の違いは見られたものの、どの季節でも睡眠様姿勢の大部分は夕方の搾乳から翌朝の搾乳の間に発現していた。このことから夜間の睡眠様姿勢を十分に発現できるような環境および管理が必要であると考えられた。

原著論文
  • 星野 智, 島田 英里, 髙橋 勇太, 八代田 真人
    2022 年 58 巻 2 号 p. 48-65
    発行日: 2022/06/25
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    日本国内の動物園における樹葉サイレージの活用を目的に,比較的よく利用される常緑樹2種(シラカシ,スダジイ)および落葉樹1種(ソメイヨシノ)の樹葉をサイレージ調製し,調製過程における栄養成分および発酵性状の変化を比較するとともに,飼育下の有蹄類2種および霊長類4種に給与した際の飼料としての受け入れ度合い(受容度)を評価した。栄養成分のうち,中性および酸性デタージェント繊維(P<0.001),灰分(P=0.011)およびCa(P=0.030)含量では調製過程に伴う経時的な増加が,非繊維性炭水化物(P<0.001)および細胞内容物(P<0.001)含量では経時的な減少が確認された。樹葉3種ともに調製過程での顕著なpHの低下や乳酸生成は確認されなかったが,変敗も確認されなかった。各動物種が示す受容度は,サイレージ調製前後で顕著に変化はしないものの,動物種によって受容度が異なったため,動物種ごとに給与する樹種を選定する必要があるだろう。

  • 小針 大助, 伊藤 滉一, 路川 強
    2022 年 58 巻 2 号 p. 66-73
    発行日: 2022/06/25
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    本試験では,ウシのカウブラシ利用欲求に及ぼす利用制限の影響について調査を行った。茨城大学農学部附属国際フィールド農学センターの黒毛和種繁殖牛を使用した。14日間,7日間,3日間の3つの制限条件を設け,制限前,制限中,制限解除後における維持行動,ブラシ利用以外の身繕い行動(セルフグルーミング,物を使ったグルーミング,社会的グルーミング),カウブラシの利用を比較した。維持行動およびブラシ利用以外の身繕い行動については,いずれの制限条件においても変化は認められなかった。一方で,ブラシの利用については,14日間の制限条件では,制限前後で差は認められなかったが,7日間の制限条件では,制限前と比較して制限解除後の平均利用時間が約175%増加,3日間の制限条件では,制限解除後の平均利用時間が約80%増加した。以上より,カウブラシの利用欲求は他の身繕い行動とは独立した欲求である可能性があり,利用制限による影響を受ける可能性が示唆された。

資料
  • 森 万佑子, 出口 善隆, 伴 和幸
    2022 年 58 巻 2 号 p. 74-80
    発行日: 2022/06/25
    公開日: 2022/07/20
    ジャーナル フリー

    飼育環境が動物へ与えるストレスの評価は、動物福祉の充実において重要である。トラで糞中コルチゾール濃度がどの程度、血中コルチゾール濃度を反映しているか定かではない。本研究ではメスの飼育トラ1頭を用いて、年間を通じたコルチゾール濃度動態および糞中と血中のコルチゾール濃度の関係を調べた。その結果、糞中と血中のコルチゾール濃度において有意な正の相関が認められた (r=0.60、P<0.01) 。これより、糞中コルチゾール濃度は血中コルチゾール濃度の変動を反映していることが明らかとなり、非侵襲的なストレス評価に糞中コルチゾール濃度が有用だと考えられた。またトラで血中および糞中コルチゾール濃度には季節変動がみられず、年間を通じたストレス評価の指標として有用なことが示唆された。アムールトラやスマトラトラなどの他亜種で季節変動の影響を受けず、年間を通じた糞中コルチゾール濃度によるストレス評価が可能であると明らかにできると考えられた。

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