2年半以上持続した失声症状の改善要因を明らかにするため,ある事例の検討を行った。クライエントは,セラピストの提案により無声音での会話(ひそひそ声で話すこと)や自分の行動を自分に向けて言語化すること(独り言)を課題として続けた。その結果10か月ほどで正常な音声で話せるようになった。改善要因を検討したところ,ひそひそ声で話すなどの「利用」を用いたことで改善への意欲が維持され,また独り言は「注意のそらし」として機能し,発話の無意識化を促したものと考えられた。このことから,効果的な介入は「利用」や「注意のそらし」であることが示唆された。