2006 年 1 巻 3 号 p. 25-34
本研究の目的は,夫の急な心疾患発症により心理的危機状況に直面した妻が,心理的な安定に至るプロセスの中で経験したことを質的に明らかにすることである.方法は,CCU に緊急入室した壮年期男性患者の妻で,書面にて研究の同意が得られた 9 名に半構造化面接を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ法により分析した.分析の結果,<状況把握><状況対処><医療者関係性><心疾患との心的距離><役割認識>の 5 つのカテゴリーを見いだした.妻は状況を把握しながら対処し,その対処様式は状況把握に応じて変化すること,また対処様式の変化に伴い,妻と医療者との関係性も変化することが明らかになった.さらに,妻は,状況把握の変化に伴い,心疾患との心的な距離感が変化すること,病気についての知識を得ることに影響を受け,“患者の妻”として新たな役割認識を持つことにより,自らの役割認識を変化させていることが明らかになった.