2025 年 21 巻 p. 48-59
開胸手術後の患者のQOLがどのように変化しているのか,またその変化にせん妄はどのように影響しているのかを明らかにする.2019年9月~2022年6月に開胸手術を受けた患者に入院時,退院時,術後6か月後,術後12か月後のSF-36を用いた調査をした.二元配置分散分析の結果,サマリースコアは「役割・社会的側面」に,下位尺度では,「日常役割機能・身体」,「体の痛み」,「日常役割機能・精神」において,時期とせん妄の有無との間に交互作用があり,せん妄を発症した患者のQOLは,発症しなかった患者に比べ緩徐な改善であったことが認められた.また,せん妄の有無の主効果でも6か月後で同じ尺度に,12か月後で「日常役割機能・身体」,「体の痛み」に有意差を認めた.社会生活の再構築の困難さにおいて,せん妄と時期が影響していたことが示唆された.このことからせん妄の予防は重要であり,退院後も継続的な介入が必要である.