日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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原著論文
歯槽骨骨密度評価装置の臨床的評価
神田 省吾江原 雄二大西 吉之高石 佳知安光 秀人桑原 明彦江原 大輔山上 哲贒
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2012 年 32 巻 1-2 号 p. 65-70

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抄録

骨粗鬆症は骨密度の低下を特徴とし,骨折リスクが増大しやすくなる骨格疾患である.我が国の骨粗鬆症患者は1100万人と推測され,介護の原因として,転倒,骨折によるものが12%と決して少なくない.
しかしながら,骨折等が生じない限り,自覚症状が乏しい.実際に受診されているケースは少ない.骨粗鬆症検診の検診率は5%であり,実際に治療されている患者の割合も20%程度とされている.
そのため歯科受診患者において,骨密度が簡易に検査でき骨粗鬆症の受診を促すことができれば,骨折に起因する寝たきり患者などの社会的問題に貢献できると考えられる.
今回使用する歯槽骨骨密度評価装置(Bone Right®,デンタルグラフィック社製)は,デンタルエックス線撮影画像の濃淡度を補正してヒストグラムで表示することによって簡便かつ安価でしかも高い精度と再現性が得られる.
今回対象としたのは骨粗鬆症の診断をされていない40歳以上65歳までの女性99人に歯槽骨骨密度(以下al-BMD)を測定した.
結果として,骨密度は加齢とともに減少していた.
また,骨粗鬆症と診断されていない患者が対象であるにもかかわらず,al-BMD が85以下の割合が40歳代では2%,50歳代では7%,60歳代では14%と増加していた.
この結果は,骨粗鬆症の低受診率と多くの潜在的骨粗鬆症患者の存在を裏づける結果となった.
研究対象の患者は,al-BMD 評価結果に興味を示すものの,実際に整形外科受診にはつながらなかった.

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© 2012 特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
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