日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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症例報告
包括的歯科治療により咬合と歯周環境の改善を行った1 症例
松岡 力
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2015 年 35 巻 3 号 p. 195-202

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抄録

歯科治療において部分的な問題を主訴にした症例の場合において,長期的に調和された顎口腔系機能を捉えた治療を考慮すると,一口腔一単位で治療計画を考えなければならない事例に遭遇することは少なくはない.提示する 症例は,補綴物辺縁部の深い歯肉縁下う蝕と歯の動揺を認める4 部の治療相談を主訴とする患者であった.精査し た結果,同部は再補綴処置を行っても良好な予後は望めないと判断した.全顎的には,部分的な歯の位置異常による機能運動時の咬合機能の不具合と,歯周環境の問題もみられた.そのため主訴部の治療だけでなく全顎的な診査診断を行い,包括的治療計画を各専門分野の術者間で立て,う蝕部位の補綴修復処置と歯周環境の健康回復のための歯周治療,患者自身の清掃管理を考慮した位置異常の歯に対する矯正治療,また保存不可能な歯に対して抜歯前の骨量獲得のための挺出処置の後,インプラント補綴を行った.治療後,適切な咬合関係と歯周環境の改善と維持を獲得でき,患者の満足を得られたので報告する.

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© 2015 特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
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