日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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症例報告
顎変形を伴う多数歯欠損に対し,インプラントと可撤性義歯を用いて咬合再構成を行った症例
根間 大地
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2022 年 42 巻 1 号 p. 77-87

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抄録

骨格的上下対向関係の不調和が著しい咬合崩壊患者に対し 咬合再構成を行った症例を報告する. 53 歳,女性,上顎前歯部の疼痛を主訴に来院.診査の結果,臼歯部咬合支持を失ったため,下顎前歯部の突き上げにより上顎前歯部は歯根破折し,歯周組織の腫脹が見受けられ,すれ違い咬合に移行する寸前の状態であった.治療計画を立案した後,全顎的な治療を開始した.上下顎にプロビジョナルレストレーションを装着して咬合平面を修正後,上顎前歯部は骨造成を伴うインプラントの埋入手術を行った.咬合平面の乱れが著しいため適切な歯冠長が得られない上顎臼歯部は歯冠長延長術や部分矯正により歯軸を改善した後に,歯冠修復を行った.下顎枝の長さの違いやそれに伴う下顎の偏位もあるため,左右差が著しい下顎は残存歯に支持を求めた可撤性義歯にて機能回復を行った.上顎の前方多数歯欠損に対してはインプラントを用いることでロングスパンブリッジ等の力学的トラブルや可徹性義歯によるクラスプ等の審美障害を回避した.一方,左右差の著しい下顎は可撤性義歯を用いることで上下顎の前後左右的な対咬関係の不調和を改善した.顎変形を伴う多数歯欠損に対しインプラントと可徹性義歯を用いて咬合再構成を行うことは有用であることが示唆された.

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© 2022 特定非営利活動法人 日本顎咬合学会
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