本症例(患者:71 歳,女性)は,右側関節突起欠損で20 年以上歯科治療を受けておらず,歯は自然脱落し重度の咬合崩壊を呈していた.上顎は総義歯,下顎は部分床義歯により機能回復を行った.関節突起が欠損しているということは,顎関節による制限が無く,咬合採得が非常に困難である.手技としてゴシックアーチ描記法を選択したが,咬合高径が変化すると誤差が出やすいので,できるだけ変化のないように描記装置を設置した.描記図は非対称で,常に右へ偏位した状態であった.困難な症例のため,診査のみならずリマウント調整を行う際の咬合採得にも採用し,最終義歯作製も同様に行った.最終義歯装着6 カ月経過後も良好な結果が得られた.