日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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症例報告
最小限の歯質削合により咬合再構成した1 症例
小森 真樹
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2025 年 44 巻 3 号 p. 334-342

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抄録
「歯を白くしたい」と希望する50 代男性にMI 修復およびデジタルデンティストリーを応用した全顎的修復処置を行った.その一連の治療手順および手法について整理し解説する.治療に際しては一口腔単位の診査を行い,極力既存のエナメル質を温存し審美的な結果を目指すこととした.初期治療の際は,すべてのエナメル質を温存した上で再評価を行い,補綴前処置としてマウスピース矯正治療を併用することで歯軸の改善を行い,より歯質の切削が少ない形を目指すこととした.保定期間終了後再評価を行い,口腔内スキャナーからのSTL データ,CT のDICOM データ,顔貌写真のデータの重ね合わせからプリンター模型を抽出し,患者へのモックアップを行い,コンサルテーションに役立てた.モックアップの上から歯質を削除し,プロビジョナルレストレーションの装着後,接着的手法にて修復処置を行なった.従来型のフルクラウンの形成では歯の強度は大幅に失われるが,今回のようなエナメル質を温存したアプローチは歯の長期保存,長期安定には有効であると思われる.またデジタル機器を応用した診査,診断は解剖学的な基準も参考にすることができるのみならず,患者へのコンサルテーションにも極めて有効であった.
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