日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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新たなクリニカルリサーチの展開を目指して糖尿病と歯周病
高橋 慶壮杉原 薫横瀬 敏志高森 一乗村上 幸生西川 博文長谷川 彰彦宮田 隆
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2002 年 22 巻 3 号 p. 334-339

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抄録

糖尿病は歯周病のリスク因子であり, 歯周病は糖尿病の第6番目の合併症とする考えもある.糖尿病は1型と2型に分類され, それぞれの病型について, 歯周病とのかかわりが研究されている.最近, 糖尿病患者の歯周病の重症度は, 1型では罹病期間と, 2型では肥満度と相関することが報告された.さらに, 糖尿病の発症率や病態には遺伝性素因および社会的要因が複雑にかかわるため, 多様な糖尿病患者の歯周病病態を理解するために, 糖尿病患者の歯周病罹患状態の実態調査が行われつつある.日本人のライフスタイルは戦後, 急速に欧米化し, それに伴う成人病, とりわけ2型糖尿病患者数は700万人を超え, 今後10年で1000万人を超えるとする予測もある.したがって, 糖尿病患者に対する歯科治療体系を早期に確立する必要がある.
一方, 歯周病は糖尿病のリスク因子になるかもしれない.2型糖尿病患者では, 歯周治療により炎症巣で産生されたtumornecrosis factor α (TNF-α) 量が低下し, インスリン抵抗性および血糖コントロールの改善に働くというメカニズムに言及した研究が報告された.このような歯周医学の研究が進むにつれ, 歯周治療の意義は, 「歯が無くなるから治療する」から「歯周病を治療しないと全身の健康を損なうから治療する」へと変化してゆくであろう.しかし, 全身疾患が歯周病の病態に及ぼす影響に関しては疫学的研究が多く, メカニズムまで言及した研究は多くない (表1) .本総説は, 1型および2型糖尿病患者の歯周病病態に関する研究の現状を紹介しようとするものである.

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