日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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矯正学的な咬合再構築における現状と問題点第1報: 口蓋裂症例
倉林 仁美佐藤 友紀井上 愛槇 宏太郎
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2005 年 25 巻 3 号 p. 438-446

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抄録

唇顎口蓋裂に起因する咬合異常は, 顎裂の存在と, 上顎骨の低成長および上顎歯列弓の前方・側方狭窄による骨格性反対咬合があげられる.口唇形成から顎裂再建などの外科的処置, 言語を含む口腔機能の確立を図るために, 各診療科の専門性を考慮したチームアプローチによる長期間にわたる包括的治療が行われている.
成長期からの長期的な咬合管理を必要とする原因としては上下顎の顎関係の不調和や瘢痕の存在, 言語を含めた口腔機能の獲得に時間を要することなどがあげられ, 治療の難易度を左右する因子となっている.上下顎関係の改善や歯の移動は瘢痕組織の存在からも限界があり, 口腔機能の改善とは必ずしも一致しない.
唇顎口蓋裂における咬合異常に対する咬合の再構築を通じて, 歯科が担当する手法の問題点と今後の展望について以下のような必要性が考察された.
1.歯列再構築を計る上では, 骨の大きさ, 量, 形状を歯周組織より広範な範囲で制御する方法を考えていくこと.
2.再構築の結果が機能改善にどのように寄与しているか正確に推定する手段を持つこと.
3.患者の負担をより軽減するために矯正治療装置の益々の開発, 発展を試みること.

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