日本顎咬合学会誌 咬み合わせの科学
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新しい頸椎牽引装具 (モリサワ係締) による下顎後退症患者への咬合治療の効果
森澤 雄一郎
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2006 年 26 巻 1-2 号 p. 53-61

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抄録
不正咬合による, 頸椎をはじめとした姿勢の悪化は旧来より伝えられている.そのアプローチとして, カイロプラクティックや運動療法などを咬合治療と併用し, 良好な結果報告を散見するが, 施術者の技量, 患者の自発的努力などに負うことが多く, 統一した見解が得られにくい.
一方、他科での頸腕症の治療において, 従来よりグリソン締結帯による頸椎牽引療法が広く使用されているが, その支持部は後頭結節と下顎にある.下顎には開口反射, 下顎張反射, 歯根膜咬筋反射および閉口反射といった反射があり, 牽引時の圧力によって閉口筋群, 開口筋群の過緊張によって, 頭頸部周囲筋の安静状態が得られにくい。特に, 咬合不正から頭頸部周囲筋に疼痛を訴える患者は, 顎関節にも問題を抱えていることがほとんどであり, 下顎に支点を求めることによる顎関節への圧迫は, 顎関節症を悪化させる誘因となりうる.そこで, 下顎に支持部を求めない頸椎牽引装具を考案した.そして, 下顎後退患者2症例に, その装具による間歇的介達牽引を咬合治療の補助的手段として併用した.自然な頭頸姿勢にて得られた術前術後の頭部エックス線規格写真により, 下顎位, 舌骨位, 頸椎アライメントの変化を比較検討した.そして, 比較的早期に良好な結果が得られたので紹介したい.
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