抄録
日本では、ALTに関わる制度が30年以上実施され、現在約2万人のALTが学校現場に配属されている。しかしながら、ALTの専門的力量形成が国の教員養成課程・教員研修制度の分野において議論されてこなかった。筆者は、日本の学校を拠点に長年授業実践してきているALTの実態とニーズに応じる専門職コミュニティの構築が必要であると考える。本論文は、学校拠点方式を実施する教職大学院に在学中の高校ALTのCさんの事例を取り上げ、Teacher Agencyの概念に基づき、ALTのエージェンシーを起こす要因①教えると学ぶことに対する認識の再構築;②重層な実践コミュニティとの関わり;③実践を省察する習慣化を検討した。まずは、ALTの資質力量向上の需要に対して、学校拠点方式の教師教育プログラムの仕組みを説明した。そして、事例研究として、Cさんが月ごとに書かれた省察的実践記録を内容分析することによって、Cさんのエージェンシーの在り方を明らかにした。最後に、エージェンシーを起こす要因を検討し、「学校拠点方式」の教師教育モデルがALTの専門性を向上させる可能性と有効性を検証した。