日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
Print ISSN : 1346-9657
在宅ケアにおける訪問看護業務の事例群別所要時間の比較
藤谷 久美子島内 節亀井 智子
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1999 年 1 巻 1 号 p. 36-41

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抄録
目的:訪問看護の直接的ケア業務の所要時間,事例群別のケア業務内容の特徴と訪問頻度,連携,管理などの間接的業務の所要時間について明らかにすることを目的に,訪問看護利用者サービスのための業務時間調査(タイムスタディ)を行った.方法:対象は関東近県の訪問看護ステーション30機関,病院8機関の40歳以上の391名を対象とし,(1)ターミナル事例(以下:ターミナル群),(2)医療処置事例(以下:医療群),(3)痴呆事例(以下:痴呆群),(4)生活援助事例(以下:生活援助群)の4群について1週間に要したケア業務時間,訪問頻度,連携と管理時間について担当訪問看護婦(士)に業務時間測定を依頼した.結果:1)各群別の対象者数はターミナル群60例(15.3%),医療群147例(37.7%),痴呆群92例(23.5%),生活援助群92例(23.5%)であった.2)訪問看護業務における1週間あたりのケア時間は「皮膚と清潔のケア」(54.2分),「摂取と排泄問題へのケア」(38.0分),「身体機能日常生活動作へのケア」(36.8分)の順に長かった.ターミナル群では他の事例群に比べて全体的にケア時間が長く,心理面のケアや家族の問題状況へのケアなどに多くの時間を費やしていた.医療群では医療処置に関する業務に要した時間が痴呆群や生活援助群の3〜4倍となっていた.痴呆群では,コミュニケーションや認知の問題状況へのケアにおいて,他の事例群よりも多くの時間が費やされていた.生活援助群では全体的に他の事例群に比べてケア業務時間が短かった.いずれの群とも1回のケア平均時間は約70分であった.3)事例群別1週間の訪問頻度は,全体で平均2.4±2.3回,ターミナル群4.3回,医療群2.2回,痴呆群2.0回,生活援助群2.1回であり,ターミナル群が他の事例に比べで有意に訪問頻度が高かった(p<0.01).4)事例群別の1週間の看護管理時間は全体平均で48.5±68.2分,ターミナル群79.9分,医療群49.4分,痴呆群35.0分,生活援助群39.9分であり,ターミナル群が他の事例に比べで有意に管理時間が長かった(p<0.05).5)事例群別の1週間に要した他機関等との連携時間は全体平均で28.5±51.1分,ターミナル群46.3分,医療群28.1分,痴呆事例27.6分,生活援助群18.8分であり,ターミナル群と生活援助群間で有意差があった(p<0.01).以上の結果は各訪問看護機関のケア対象者の受入れ許容範囲,看護職の熟練度に応じた事例の分担方法,訪問看護の効果的な体制・運営管理に生かされると考える.
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© 1999 一般社団法人 日本地域看護学会
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