抄録
目的 保健婦が行う家庭訪問の理解を通して,公衆衛生看護への学生の関心興味を高めたいと,授業の中で,初回訪問場面を素材にしたロールプレイングを教員で行った.本研究では,家庭訪問の一連の授業展開におけるロールプレイング授業について,実施後の学生の学びから,教育方法としての効果を明らかにすることを目的とした.研究方法 1)ロールプレイング授業の特徴:家庭訪問を具体的に理解させるため,一連の授業の中では,学生に身近な母子事例を設定し,推測される問題,必要な情報,訪問計画立案など展開してきた.その訪問計画と母子事例をもとに,教員によるロールプレイングを実施した.学生は演者の視点を割り当てた観察者とした.2)ロールプレイングからの学びの分析:今回のロールプレイング授業の効果を次のように分析した.対象はロールプレイングの授業に出席した学生84名(編入生7名を含む)のレポート内容.方法はレポート課題における学生の記述から,ロールプレイング授業からの学びと判断できる記述を抽出し,カテゴリー分類した.結果 レポートから抽出した学びの記述は329件,学生1人あたりにすると39件であるが,学生によってかなり数に差がみられたが,記述表現の違いなどを検討して,16のカテゴリーに分類した.最も多かったのは「家庭訪問における保健婦の姿勢,態度」47名,次いで「家庭訪問における保健婦の役割」33名,「信頼関係の確立」25名,「家庭訪問の意義」21名,「臨機応変な対応」21名,であった.学生の学びから,家庭訪問についての具体的な理解が深まったことが明らかになった.また全体的にみると,看護を行ううえでの基本的な知識,職業人として必要な人間性や感性,専門職としての適切な判断力や行動力など,保健婦の知識,態度,行動に関する記述も多くみられた.結論 今回のロールプレイング授業により,家庭訪問への具体的な理解が深まり,教育方法としても学生の意欲や関心を高め,学習を深める効果が得られたことを確認することができた.