抄録
行政に働く保健師が行う家庭訪問の件数が年々減少するなかで,保健師の,対象を理解する能力の低下が危惧されている.そこで,保健師自身は最近の家庭訪問の現状に対してどのような認識をもっているかを明らかにし,その認識に影響していると考えられる要因を探ることを目的とした.研究デザインは質的帰納的研究とした.調査は中堅保健師7名を対象にグループインタビュー法を用いた.分析の結果,『家庭訪問の意義』『保健師個人の現状に対する認識』『家庭訪問の実態』『保健師仲間の特徴』『所属する職場の特徴』『現任教育の実態』の6つの中核カテゴリーに分けることができた.保健師個人の家庭訪問に対する認識は『家庭訪問の意義』『保健師個人の現状に対する認識』であった.これは家庭訪問の意義を認識しているが,実際の訪問場面でその意義を実感することが減少しており,保健師はその状況にジレンマを感じ,家庭訪問の意義や自分の能力に対して不安をもつことがあるというものだった.その認識に影響していると考えられる要因として,『家庭訪問の実態』『保健師仲間の特徴』『所属する職場の特徴』『現任教育の実態』があった.