抄録
目的:地域看護学の履修開始時期は,大学によって異なっている.その違いが学生の地域看護学の理解度や興味,看護観の形成にどのような影響を与えているかを分析し,学生に理解しやすい適切な地域看護学の履修開始時期を考えることを目的とした.方法:看護系大学のシラバスから地域看護学の履修開始時期を5パターンに分類した.各パターンから28大学を抽出し,4年次生に対して,郵送法による質問紙調査を実施した.調査項目は,地域看護学についての(1)イメージ,(2)興味,(3)理解度,(4)難易度,(5)位置づけ,(6)履修時期,(7)看護観である.分析方法は,各パターンを学年別の履修開始時期により3群に分け統計的に分析した.結果:地域看護学のイメージは「広い」「暖かい」「曖昧」であり,難易度ではやや難しいという回答が多かった.興味では在宅看護の領域が高かった.3群間の比較では,3年次履修開始の群のイメージ,理解度,難易度において,有意な差がみられたが,本結果は学生の地域看護学の考え方に履修開始時期が影響することを必ずしも示すものではなかった.結論:本研究から履修開始時期の違いによる学生への影響は3年次開始の群にやや強く表れた.しかし全体的に同様な傾向であった.学生の地域看護学の考え方への影響は,履修開始時期だけでなく,さまざまな要因があり,今後その要因を明らかにし,学生に理解しやすい地域看護学の教育のあり方を検討することが示唆された.