抄録
目的:農村部における生活習慣病予防の保健指導場面で,地域の文化を考慮した個人への援助行為,および地域を含む援助行為を調査し,両者を通じて,健康を志向した地域の文化を育むことを意図した生活習慣病予防の保健指導方法を明らかにする.方法:農村部3町に勤務する保健師5名が行う生活習慣病予防の保健指導場面を参加観察し,成果のあった19事例について次のことを質的帰納的に分析した.(a)保健師が考慮した地域の文化の内容.(b)個人への援助行為と地域を含む援助行為を通じて行われた【健康を志向した地域の文化を育むことを意図した保健指導方法】.結果:地域の文化の内容は,変容していくもの,変容の少ないもの,新たに定着しつつあるものだった.【健康を志向した地域の文化を育むことを意図した保健指導方法】は,個人・地域の両側面から地域の文化を把握する,個人に対し地域の文化への思いを受け止めつつ生活習慣病の要因となる可能性に気づきを促す,地域の文化に抵抗の少ない方法や地域の文化を活用した方法の提案を個人・地域の両側面から行う,というものだった.考察:生活習慣病予防の保健指導において,保健師は次の方法で個人の健康を支援することにより健康を志向した地域の文化を育むことにつながる.変容の可能性と発祥に着目して地域の文化を捉え,生活習慣病予防に望ましい生活と地域の文化との矛盾に対する個人の葛藤を受けとめ,帰属感を保障し,安心感を支える.そのうえで,個人・地域の両側面から,変容の可能性に即した方法および地域の取り組みの活用を提案したり強化する.