抄録
目的:育児に悩む母親を対象としたグループ活動について,参加した母親の経験や母親が実感している変化を明らかにすることを目的とした.方法:グループに参加した母親3名に対して半構成的面接法にて「グループへの参加動機」「グループ参加中の経験」「グループ参加後に振り返って実感している自分の変化」などを尋ねた.結果:3人の母親たちは当初「教科書どおりに育てる」などの理想をもって育児をしていた.そして,思いどおりにならないときに子どもに怒りを感じたり,叩いたりしていた.そのことに悩んでいたことがグループへの参加動機であった.母親はメンバーや保健師への信頼関係ができ,安心感が高まるに連れて悩みを話せるようになっていた.そして安心した場で悩みを話すことで気持ちが軽くなる経験をしていた.母親は,理想を追うのではなくありのままの自分を受け入れていけばよいと実感するだけでなく,子どもへの怒りが自制できるようになるという養育態度の変化も感じていた.結論:母親はグループという安全な場に身を置いて育児の悩みを話すことで,育児における気持ちの苦しさを解消していた.また,母親が自分自身を認められるようになるという変化があった.グループを通じて母親の育児への自信を育む支援を行うことが,母親の力を引き出す一助となると考えられた.