抄録
目的:認知症を有する人ならびに家族が退院時に抱くニーズを把握するとともに,それら退院時ニーズと退院支援専門部署の支援の有無における関連を明らかにすることである.方法:関東圏にある地域医療支援病院を2005年から2009年に退院した退院時年齢40歳以上で,かつ認知症の診断を有する者の全数を対象にカルテを用いて調査票に基づきデータセットを作成した.次いでデータセットからコードを抽出し,その内容より退院時ニーズを集約し,退院支援専門部署の支援の有無における関連を分析した.結果:退院時ニーズは「サービス・制度」「療養場所の見通し」「生活環境」「服薬」「食事・栄養」「介護負担感」「認知障害」「医療処置」「経済的負担」「移動」「排泄」「安全・安楽」「全般的不安」「行動心理徴候」「かかりつけ医」「身体症状」「清潔」「手段的日常生活行為」「コミュニケーション」「生活リズム」「緊急対応」「就労」の22項目に集約された.なお,退院時ニーズと退院支援専門部署の関連では"支援あり群"は"支援なし群"に比して「サービス・制度」「療養場所の見通し」「行動心理徴候」のニーズを有する者の割合が有意に多く,「排泄」の二ーズも多い傾向にあった.考察:今後は認知症を有する人と家族の退院時ニーズの特性を踏まえた,その人らしい生活を営むための地域社会における円滑な退院計画のシステムづくりが必要である.