抄録
目的:新興住宅地に居住する50〜60歳代女性を対象とした,近隣他者との交流を促すプログラムの効果と意義を検討する.方法:プログラムは,先行研究より示された,前期高齢女性のQOLを高める身近な他者との交流の特徴を示す概念『気遣い合い的日常交流』と,その交流の相互行為を示す構成概念「日常的相互関心」「共感的相互理解」を核に,居住地域の暮らしのなかでの主体的な健康増進を意識づける構成内容とした.実施の直前と直後,1・6・12か月後にQOLの認識を問う質問紙調査,直後と6か月後に日常生活と近隣他者との交流に関する意識の変化を問うインタビューを行った.結果・考察:参加者24人のうち全調査に回答した者は19人,平均年齢59.47(SD4.98)歳であった.QOLの認識は,心理・社会的側面,すなわち幸福感と社会関係の認識において6か月後と12か月後に有意な変化がみられた.その理由に,直後から6か月に起こった日常生活と近隣他者との交流に関する意識の変化が考えられた.プログラムと自主グループの活動を通じ,未来への前向きな姿勢,仲間意識,近隣コミュニティへの関心や愛着,住民としての使命感と行動等,10年後を見据えた前向きな変化がみられた.結論:プログラムは,個人・集団・地域の多次元レベルの効果をねらえる,中高年女性のQOLの向上と維持を支援する近隣コミュニティ単位の公衆衛生活動として有用性が確認された.