抄録
目的:訪問看護ステーションの管理者が管理実践上で体験した困難の様相を明らかにすることである.方法:A県下の開設主体の異なる訪問看護ステーションの管理者14人を対象とし,管理実践上での困難について半構造的面接を行い,得られたデータを質的帰納的に分析した.結果:母体組織に所属している訪問看護ステーションの管理者が体験している管理実践上での困難には,3つの様相がみられた.まず,事業所の最高管理者として,自分の部署から外をみたときに,母体組織との関係性で生じる軋轢と,訪問看護制度上の縛りからなる【仕組みのなかでの葛藤】があった.次に自分の職場内をみたときに,職場運営上の課題が山積した【担う役割への焦燥】があり,これらの状況に直面して,管理者を理解し認めてくれる者がいない状況での【共通理解者不在の孤独】という3つの要素から成り立っていた.結論:訪問看護ステーション管理者の困難感として,職務裁量が少ない状況で経営管理責任を負うことへの葛藤と孤独が考えられ,母体組織内での十分な権限移譲と管理実務面での支援,心理的な支援としての承認の重要性が示唆された.