目的:臨地実習指導者による保健師ポートフォリオを活用した学習支援とその効果を,実習生・指導者双方の観点で記述することである.
方法:研究対象は,キャリア開発を目指すアクションリサーチでポートフォリオ作成支援を受けた指導者が,看護系大学総合実習においてそれらを活用して学習支援に取り組んだ事例である.1町の指導者2人の学習支援記録と実習前後の面接逐語録,学生4人の実習記録と実習後面接逐語録を用いて,指導者の働きかけ・振り返り,実習生の反応に関するデータを抽出し,質的帰納的に分析した.
結果:指導者の保健師ポートフォリオはキャリアや担当地区に焦点を当てたもので,活用場面は3場面であった.指導者はタイミングを計って場を設定し,事前にストーリーを構成し,語り始める前に場を温め,エピソードを再現するように語り,語りながら反応をみて調整する働きかけをしていた.また,指導者の振り返りは,働きかけと相互作用について,さらに保健師としての成長に向けて行われていた.実習生は保健師活動を具体的にイメージして保健師の専門性を言語化し,指導者の保健師としての成長をとらえていた.
考察:指導者による保健師ポートフォリオを活用した学習支援は,アクションリサーチで生じた変化の継続・発展による取り組みであり,実習生と指導者の心理的距離を縮め,相互作用を促進させる機会になっていた.視覚に訴える資料と生の語りの組み合わせにより,指導者から保健師の活動理念を伝えるアプローチとして有用と考える.